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SAKIYAMA、ATOYAMAに見る

「人間愛」の野外彫刻公園を目指して

1.まちの背景

「ごはんにみそ汁をかけるんでない」

 朝ご飯が並ぶちゃぶ台の前で、母親に叱られた思い出を語る炭鉱出身者は多い。一見、行儀作法かと思えるが、ご飯が崩れるようすが落盤を連想させることからの言葉で、この「縁起かつぎ」には、父親が事故に遭わないようにとの祈りが込められていた。

 昭和30年代、最盛期を迎えた炭鉱のまちには、独特の人情が色濃く残っていて、山間の狭い敷地に昔ながらの棟割長屋や、通称「文化屋根」と呼ばれる、一棟四戸または六戸建ての腰折型鉱員住宅がひしめき、便所は4棟にひとつ、水道も集落ごと、浴場も区域にひとつしかなかったが、誰もそれほど不自由に感じていなかった。むしろ、隣との薄い板壁は、トントンと意思の疎通をするのに都合がよく、流し場は主婦の社交場であり、他人の子でも分け隔てなく叱るのがここでは当たり前のことだった。見ず知らずの他人が越してきても温かく受け入れる優しさがあり、農村から来た花嫁は、初め無遠慮に家に入ってくる近所の奥さんに驚くが、おいしい漬物の漬け方を習い、味噌・醤油はもちろん、時には夫に持たせる弁当を貸し借りするようになっていた。そして、そこに暮らす誰もを身近に感じ、一旦事故が起こると他人事に思えなくなった。

 夫や父親は、来る日も真っ暗な坑内で、山鳴りに神経をすり減らしながら、キャップランプの明かりだけを頼りに石炭を掘り続けた。出坑後には床にへたりこみ、ようやくタバコに火をつけ、地の底からの生還を実感している姿があった。いつ起こるともしれない災害への不安があった故に、炭鉱(ヤマ)に暮らす人々との間には特有の家族的な結びつきが生まれた。そして、そのことを言い表すのに「一山(いちざん)一家(いつか)」という言葉が使われることがあった。

 

  炭鉱都市の繁栄までには

      ・ 家庭の暮らしでは、一山一家

      ・ おらが学校と呼ぶ、一山一校

      ・ 職場・現場での関係は、先山後山

      ・ 炭鉱社会での強い絆、友子制度

  しかし、エネルギー革命後の産炭地は、激動の時代を迎えた

      ・ 戦時戦後による荒廃感

      ・ 炭鉱閉山による脱力感

      ・ 過疎・少子高齢化に空虚感

                炭鉱社会は、大きく変貌した

  都市も、地域経済も、人の気持ちも滅びゆく現今に、焦燥感が漂う。

 

2.彫刻公園へのアプローチ

 人類の歴史は創造の歴史であり、現在自分たちのいる世界がどのように築かれてきたのか、その意味を考え、検証し、創造の原点を探ることである。

 そして、後世に伝えていくことが今を生きる私達の責任です。創造的な環境づくりには何が必要かということに、積極的に関わり、まちの特色づくりに努める。その一つの表現方法として、野外彫刻公園があると思います。

 死んだ知識や情報を並べるのではなく、現代に生かせる意味と将来に伝えられるメッセージを表現することが大事ではないかと思います。

 まちの地域経済の低迷、人の気持ちも混迷している時こそ芸術が人に与える心の豊かさと人間社会を支える「知と創造の現場」である芸術が必要です。

 

3.彫刻公園の趣向

 このたびの、野外彫刻公園のコンセプトでは、“人間の絆を大切に愛情社会の復活”をめざした芸術群としたい。

 さまざまな人間模様、夫婦愛、兄弟愛・・・家族愛を、そして隣人愛、社会愛を大切に表現していきたい。

 平成6年に最後の炭鉱が閉山し、最盛期75箇所あった炭鉱が、約75年の石炭の歴史に終わりを告げ、な(7)ご(5)やかな時代、炭都の歴史を表現した作品。未来永劫伝えていきたい。

 ヤマの代表、シンボルであるサキヤマ(先山)とアトヤマ(後山)を産業遺産として、働く人、産業を興す人、いろいろな側面から産業を支え、また旅法師及び旅法師Jrの夫婦、兄弟、姉妹・・・を表現し、家庭を守った人々の汗で築かれた生活文化や知恵の象徴のモニュメントとして彫刻公園の整備を進める。

 芸術は、地域社会と人間生活を語り、訴え、私たちの取り巻く環境を豊かにし、社会全体を活性化する重要な役割で、更なる社会性や公共性が求められる。

 芸術・文化の付加価値を発揮されますことは、私たち赤平市民が一丸となり、地域の価値を確保する鋭意努力を忘れてはいけない。

 

4.エルム高原家族旅行村を彫刻のステージ

 季節折々の野や山、川、広場・・・野外の中で、太陽と風にさらされた彫刻は美しく、生き生きとしており、野外空間とした広がりをもつ作品は楽しいものだ。彫刻が自然豊かなエルムゾーンに美しさ、潤い、人間たちに思い、温もりを与えてくれます。

 美術作品としての彫刻は、作品の存在自体が自由に表現され、都市地域の景観形成や、社会風土や文化振興を促進されることを願います。

 

  事業の目的

     ① 地域の特色の表現

      ・地域の個性づくりを考える

      ・うるおいのある都市景観の創造

     ② 芸術文化振興

      ・市民の芸術とのふれ合いの機会の増進

      ・芸術の発展への貢献、芸術家の育成

     ③ 地域社会の活性化

      ・旅行村と芸術複合の経済効果

       ・SAKIYAMAまつりから、観光づくり、まちづくり

 

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